3 分子と共有結合 【不対電子と共有結合】 電子式 最外殻電子を「・」で元素記号のまわり(上下左右)に添付した式を電子式という。電子は2個で対をつくり,対になったものを電子対という。また1個で存在する電子を不対電子という。不対電子は他の原子との結合に使われ,不対電子の数により,その元素の性質が決まる。この数を〔 原子価 〕という。 |
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例)H原子とO原子の電子式 | 例)N(K2L5)の原子価 |
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共有結合と分子 非金属の原子どうしは,不対電子を出し合って共有電子対をつくることにより結合し,互いに安定な電子配置となる。この結合を共有結合といい,共有結合によってできた粒子を分子という。このとき電子式の1対の共有電対を1本の価標で示した化学式が構造式である。 例)H2O |
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例題 塩化水素HCl,二酸化炭素CO2,窒素N2を電子式と構造式で表せ。 |
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【分子の立体構造】 構造式は平面で示しているので,分子の立体的な形を表していない。原子価(原子の手の数)は多くて4なので,原子は正四面体の中心から頂点に向かって手をのばしていると考えられる。その手に他の原子が結合するので,単結合のみからなる分子には次のような立体構造が存在する。 |
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二重結合や三重結合を含む分子は,結合の部分が直線型や平面になる。 (【発展】混成軌道と結合参照) | |
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【配位結合】 通常の共有結合は,2つの原子が互いに不対電子を出し,共有してできる結合である。これに対し,2つの原子間で,一方の原子がもつ非共有電子対を共有することによってできる共有結合を〔 配位結合 〕という。 例1)オキソニウムイオンH3O+とアンモニウムイオンNH4+ |
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オキソニウムイオンH3O+ H2Oの非共有電子対にH+が共有結合した形 |
アンモニウムイオンNH4+ |
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例2)錯イオン NH3などの非共有電子対をもつ分子は,金属のイオンに配位結合することができる。金属のイオンは陽イオン(原子が電子を放出してできたイオン)なので,NH3などが持つ非共有電子対を共有することができる。このときできるイオンを〔 錯イオン 〕といい,NH3などの分子を〔 配位子 〕という。 |
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〈参考〉 配位子には,分子や陰イオンがあり,つぎのようなものがある。 H2O(アクア),NH3(アンミン),OH−(ヒドロキシド),CN−(シアニド),Cl−(クロリド) 配位数:金属イオンに配位する配位子の数を配位数といい,金属イオンの種類にのよりほぼ決まっている。 |
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錯イオンの電荷数:金属イオンと配位子の電荷の和になる。 錯イオンの形:錯イオンの形は,その配位数によって次のような形をとる。 直線型(2配位),正方形(4配位),正四面体(4配位),正八面体(6配位) |
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錯イオンの名称 (配位数),(配位子名),(金属名),(金属イオンの価数)の順で呼び,最後に全体が陽イオンのときは「イオン」,全体が陰イオンのときは「酸イオン」をつける。配位数はモノ(1),ジ(2),トリ(3),テトラ(4),ペンタ(5),ヘキサ(6)・・・で示す。 |
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【電気陰性度と極性】 電気陰性度 |
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共有結合している2種類の原子の間に存在する共有電子対は,どちらか一方の原子にかたよって存在している場合が多い。このように,共有電子対がかたよって存在するのは,共有電子対を引き付ける強さが原子によって異なるからである。この共有電子対を引き付ける強さを数値にしたものが〔 電気陰性度 〕である。2種類の原子の間に存在する共有電子対は,電気陰性度の大きな原子の方にかたよって存在する。一般に,電気陰性度は,周期表で〔 希ガス 〕を除いて〔 右上 〕に位置するものほど〔 大き 〕くなる傾向がある。 | ![]() |
例題 次の文章中の下線部分は正しいか,誤りか答えよ。 @ 周期表の17族において,周期の番号が大きいほど,元素の電気陰性度は大きい。 B 電気陰性度の大きい元素ほど,陽イオンになりやすい。 C 2つの原子の電気陰性度の差が大きいほど,結合の極性は大きい。 D 2つの原子の電気陰性度の差が大きいほど,共有結合をつくりやすい。 @ 誤 A 正 B 誤 C 正 D 誤 |
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結合の極性 |
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例)HCl(右上) 電気陰性度はH<Clなので,HとClの間の共有電子対は,〔 Cl 〕の方にかたよる。 |
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